院内報
こあら通信 第325号 May 2025
日本脳炎ワクチンの接種時期
日本脳炎ワクチンは3歳が標準の接種時期とされていますが、これを1歳からに早めることにしました。
日本脳炎は日本脳炎ウイルスの感染によって起こる病気で、現在の日本での患者は年間10人以下ですが、6~16日間の潜伏期間の後に、数日間の高熱、頭痛、嘔吐などが現れ、意識障害、けいれんなどの脳の障害が起こって、20〜40%が死亡するという病気です。
ブタなどの動物の体内でウイルスが増殖した後、そのブタを刺したコガタアカイエカ(水田などに発生する蚊の一種)などがヒトを刺すことによって感染します。刺されると全員が発病するわけではなく、100人から1000人の感染者の中で1人が発病すると報告されています。
けっして多い病気ではありませんが、発病すると亡くなったり重い後遺症が発生したりするので油断のできない病気です。どのくらいブタに日本脳炎ウイルスが感染しているか知るために、全国でブタの日本脳炎抗体が調べられています。ここ数年は8月になると千葉県、静岡県はほぼ100%抗体があり、ウイルスがこの地域にいることがわかってきました。以前は四国・中国・九州地方が中心でしたが、温暖化の影響もあって日本脳炎ウイルスが関東地方にも拡がってきていると考えられています。
日本脳炎ワクチンは生後6ヶ月から接種できることになっていて、標準的な接種時期は3歳とされています。3歳前に接種する場合、接種するワクチンは半分の量になりますが、抗体はしっかりでき、持続期間にも問題はないことがわかっています。
2015年に千葉県で乳児の患者さんが発生したことを受け、日本脳炎ワクチンの接種時期を早めようとする動きが活発になってきました。神奈川県はブタの飼育数は多くありませんが、ワクチンの接種を早めることのデメリットもないので、5月から接種時期を早めて皆様にお勧めさせていただきます。